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その日の途切れ途切れの記憶を辿ると子供が産まれた嬉しさにかこつけて、いつもは行かないおでんの屋台でへべれけになり、駅で客待ちしているタクシーの運転手に絡み、交番で揉め、警察署の受付で両手を拘束され怒鳴っていました。その後うつ伏せで警察車両に乗せられ今はありませんが日本堤のトラ箱に収監されました。
保護室とは言うもののまるっきり牢屋のような部屋に入れられ、段々と自分の置かれている状況がわかってくると怖くなって看守さんに子供が産まれたことや、飲み過ぎて反省していることを泣きながら伝えました。しばらくすると分かってくれたのか、出られることになりました。
出られたのはいいが、どこに連れて来られたのかこの時は分かっていなかったのでタクシーを拾いに通りまでよろよろと歩き、車が拾えたのが吉原大門辺りだったと思います。帰りの車窓から見る街は段々と明るくなって来ていました。途中千住新橋を渡る時、朝日が上がるのを見てまた涙が出てきて「子供の為にもしっかりしなくては」と誓いました。
しかし現実は一杯の酒を飲むと父に近づいて行く自分がいました。二人目の子供ができた頃には以前よりひどい飲み方をし、生活状況は悪くなっていきました。一人で暮らしていた時から飲んでは仕事を休み、借金をしながら生活をしていましたので、飲み方がひどくなるにつれ生活も苦しくなっていったのも今振り返っても当たり前だと思います。

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