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二升の酒

 私は精神病院に3回入院しています。
 2回目の入院はアルコール病棟ではなく、精神の病棟でした。

あの時は、一緒に暮らしている父が朝早くに仕事に出たので、いくらかのお金があった私はすぐに近所の酒屋に日本酒を買いに出ました。最初はワンカップ3本です。なぜか買うときは3本でした。そのあとは900mlの紙パックを買って来たと思います。二時間で二升飲み干しました。其のあとは心臓が苦しくなって息がしづらくなったのを覚えています。自分で救急車を呼び隊員の方がいらして症状を聞かれ、なんて答えたか覚えていませんが丁度その時に父が忘れ物をして帰って来たんです。父の唖然とした顔を忘れられません。私は気持ちが悪くてろくに話すこともできずに運ばれました。「娘さん、アルコールの飲み過ぎですか?」そう隊員の方に聞かれて父は精神病院の診察券を出したと思います。そして病院に行くと、アルコール病棟がいっぱいで他の精神科病棟に入院しました。治療は特に無く、酒がぬけるまで個室にいました。タバコも吸えずただ寝ているだけです。お酒がぬけて体が動くようになると部屋を移されました。しかし、最初の入浴で髪を洗っていると、目の前に大便が流れてきたんです。「え?」と思いましたがそれが普通の病棟だったんです。しばらくするとすぐに居心地が良くなりました。
 病院の中でも仲良くできる患者さんが増えていき、急に病気の症状で暴れる仲良しにも慣れました。彼女のお母さんがお見舞いに来られた時に、「あなたはお酒さえ飲まきゃいいのよね。いいわね。」と言われました。何か刺さるような気持ちになったのを思い出します。
私は「簡単じゃねーんだよ。そんなんじゃない」と心の中で思っていました。そして病院から出てワンカップを買いに行きました。飲み干した後で「こんなもののために。こんなもののために。」と言いながら割れたワンカップの破片をにらみつけていたんです。それからは、看護師の目を盗んでは酒屋に行き、酒を手に入れて飲んでいました。なぜか当時ばれなかったんです。
退院しても変わりません。頭の中でどうやって酒を手に入れるか?どうやって飲むか?そればかりの毎日になっていました。