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何時間経ったかは覚えていませんが、「すいませーん水ください」と叫ばなければ水が飲めず、見張りがいない牢屋の中でなんとか水をもらいしのいでいました。中々警察署員も来てくれず、アルコール病棟の処置室に入っていた時みたいに段々と体内から酒が抜けていくと離脱症状が始まりました。最初手が震え、その内に身体全体がひきつけのように震え始めました。部屋に制服の警察官達が入ってきて離脱で苦しんでいる私の周りで「何でこうなっているんだ」と不思議な顔をしていました。すぐに救急車を呼んでくれて救急隊員が入ってきました。警察署の保護室から救急車に運ばれ二週間前に精神病院のアルコール病棟に入院していたことを説明しました。アルコール病棟が私を受け入れる、入れないと連絡していたと記憶しています。かなり時間が経ってから救急車が動き出しました。その時私が思っていたのは「早くこの苦しみから楽にしてくれ。酒を飲めば治るのに。早く家に帰って飲めばよかった。」と立派な依存症の考えでした。

二週間ぶりの精神病院に着き、ストレッチャーで運ばれてアルコール病棟に入りました。主治医の先生の顔を見たら涙が出てきました。「飲んじゃいました。」確かそんなことを言ったと思います。引っ越しが済んで生活保護を切っていたので先生は「入院がしたいのなら頑張って起きて役所に行って生活保護申請してから来てください。」と言われました。自分でもなんとか起き上がろうとはするのですが、病院という甘えもあるのか、起き上がれず、「無理です…」と弱々しく答えるのがやっとでした。前回の入院時は仕事を探し、引っ越しの予定を組んだり入院患者の役割で書記をやったりとキビキビ動いていたイメージがあるのか「さあ頑張って起きて役所に行ってください。Kさんなら行けるでしょ!」と畳みかけますが、「先生無理…」としか言えませんでした。軽い気持ちで買った缶ビールから二週間でこの状態です。今となったら進行性で治らない病気だと分かりますが、この時は三か月も飲んでいなかったのにすぐにひどい状態になっている自分が情けなく不思議でした。
「起きて」「起きられない」の何回かのやり取りの後、先生はあきらめたのかヤケ気味に「もう分かった。入院ね。今度はリブ作業所に行ってもらうよ。スリーミーティングだ。」と寝ている私を見ながら言いました。「はい…」と答え私の中間施設行きが決まり、その後は病院が手続きをしてくれて2回目のアルコール病棟入院が決まりました。