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朝起きて顔を洗って朝食をとる。毎日同じ時間に出て同じバスに乗る。同じような時間に着く。勤めている人なら当たり前のことを自分ができる様になって来ているとすごく不思議な感じがしました。少し前までは電話で起こされ二日酔いのまま慌てて仕事に出る。「風邪をひいたみたいで…」と言い訳をしていた時は良い方で、電話にも出ず無断欠勤を繰り返していた私が、今は毎日お弁当を作り家を出て一日飲まずに帰ってくる。やろうとしてもできなったことが1ヶ月、2か月とできている。仕事ではないからできているのかもしれませんが、私自身が体験することにより「今やっていることは間違いではない。」と感じる確信の部分が大きくなっていきました。
特に大きかったのは、自分とは違うと思っていた仲間の話が同じだと思えてきたことでした。例えばホームレスをしていた仲間の話は私はホームレスをやったことがないので他人事で聞いていましたが、一方私はアパートの部屋で一週間も風呂にも入らずひげも剃らず、家の中の小銭を探しボサボサの髪の毛を隠すため帽子をかぶり外に出て、自動販売機でかき集めた10円玉だけで震える手でお金を入れて酒を買おうとするもののお金が足りず仕方なくジュースを買いトボトボ帰り、一気にジュースを飲んだら気持ち悪くなり噴水のように吐いて寝ている。その様は決して普通ではなく、飲むことしかできない私でしたし、人生なんてどうなってもいいと思っていました。ですから仲間の話を聞いていると状況は違いますがこの人達と同じだと思い、今後また飲み続けて行くと確実に住むところもなくなると思いました。そして、もしそうやって何もなくなったら、またこのプログラムにつながると思うと、今ちゃんとやっていた方がいいと思うようになりました。この頃が社会に出て一番目標に向かってやっている感があったような気がします。それまではそれだけ行き当たりばったりでいい加減に生きて来たのです。
半年もするとすっかり3ミーティングの生活にも慣れ、後1年位続けてもいいかなと思った頃にハローワークで職探しの提案が出ました。やはり楽なままではダメなんだなと感じました。最初から生活保護を切って働く目標はありましたが、いざ提案を出されると、若い頃のバイトはともかくお酒なしの生活で働いた事がない私が、飲まないで働けるのか自分でもわからなくなり、急に怖くなりました。