「アイスクリーム」
私は酒以外に精神薬の乱用をしていた時間が長くあります。
17~18歳の頃ですが、付き合っていた男が当時内科と産婦人科両方やっていた病院で処方されるドイツの精神薬を乱用していました。処方箋通りではない飲み方で、3日ぐらいはラリッていられたと思います。それを飲んでシンナーを吸うのが好きでした。ぼやんとですが、おかしくなった自分の目で見たものは現実のものではなくて靄がかかった中で生きている感じです。
ある日に付き合っていた彼と何かのはずみで喧嘩になり、彼の家から飛び出したことがあります。だいぶおかしい状態でふらふら歩いて行くと、電気がついて明るい場所に出るのです。そこは工事中の建物でした。ビニールが風でひらひらしていたのを覚えています。まっすぐ入って行くとエレベーターがあり中に入りました。なぜかそこにはアイスクリームの缶が置いてあったんです。
私は缶のふたをあけて、手ですくって食べました。どうやら溶けているようで、指の間からダラダラと流れ落ちる感じです。何度も何度も手ですくい上げて口に入れようとしていました。そのあとのことは良く覚えていません。
明るさで目を覚まして、周りからの声も聞こえて来ます。何を言っているのか分かりません。
目が慣れてくると数人の警察の人に見降ろされているのが理解出来ました。しゃべることもせずにいて少しして救急隊が来たのがわかりました。そのまま病院に運ばれたようです。
次に目が覚めた時はベッドの上でした。
私がアイスクリームと思って食べていたものは工事現場にあったボンドだったのです。病院で胃洗浄して処置を受けたのだと教えて頂きました。
動けるようになって自宅に戻ると父にいつものように烈火のごとく怒られました。その夜は普通に寝て、次の日に目が覚めて浴室に行くと、鏡にボンドが白髪のようにいろんなところについている自分の顔が鏡に映りました。髪の毛から少しづつ指ではがすようにして取り、後ろの方は父が取ってくれました。
改めて警察に行くとこう言われました。「別人だな。お前がヘラヘラ笑ってエレベーターでボンドだらけでいてよ。俺たちに食べな、おいしいよと手を出したときは地獄絵を見た気がした。」
自分では覚えていません。薬やシンナーでそこまでおかしくなっていたんです。
ただ懲りずにそのあとも繰り返し騒ぎは起こします。
今はプログラムにつながったおかげで地獄絵のようなことはなくなりました。本当にひどかったと思います。