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「どんなところなんだろう?」バスに揺られながら思っているうちに停留所に着き、歩きながら入院仲間が「あそこだから。」と黄色い壁の建物を指差しました。2階建てみたいだけど1階の窓から上は壁で覆ってあり黄色い壁のお店みたいでした。看板に「マックリブ作業所」と書いてあり決しておしゃれなお店には見えませんでした。引き戸から入ると板の間で座布団が等間隔においてあり、おじさんが数人座っていました。
「なんだここは?」が最初の印象でした。2階の事務所で面談をし、「病院のプログラムが優先ですが、毎日来てください。」と言われました。やっぱり入院2回目だとこんな所にこなければならないのかと思いました。
そこでは午前10時からと午後1時半に90分ミーティングをやって、3時に終わり病院に帰るプログラムでした。ミーティングに出て話を聞くと「ホームレスなった」だの「酒を盗んだ」だの話す人たちがいて、自分とは違うところを見つけては「俺とは違う」と思っていました。ここは俺の来る所じゃないから飽きたら退院して働こうと思っていました。ミーティング参加は仕方ないけど、午前のミーティングが終わってからの2時間は居場所がないのと、お金を使いたくないから昼食を食べないと思っていたので、お昼は隣の神社で時間をつぶしていました。何もせず神社にいるのはとても長く感じていたので近くの図書館を見つけた時はこれで時間がつぶせると思いました。
しかしお腹は減るので何日かして100円位のパンを神社で食べるようになり、そこにミーティングに出ている人が来て嫌だなと思っていたら「ここで食べているの?味噌汁は出るからみんなと食べれば。」と言ってくれました。その人について行き味噌汁をいただきました。味は覚えていませんが、とても嬉しかったのを覚えています。その日からお昼は味噌汁をいただくようになりました。
「味噌汁はおかずではありません。」ある日職員さんが言っていました。味噌汁の具を沢山取る人に対してで、私にではなかったのですが、昼ご飯が味噌汁だけの私も耳が痛くご飯だけでも持ってこられないかなと考えました。リブ作業所は3時に終わりバスと自転車で病院に帰るのですが、いつも帰り途中でアパートに寄り洗濯をしていたので、その時に炊飯器のタイマーをセットしておき、朝自転車でバス乗り場に行く途中にアパートに寄って弁当箱にご飯を詰め海苔をかぶせただけの弁当を持っていくようになりました。これがこの後の通所中のお弁当作りの原点になりました。

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