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「お酒のせいで離婚しました。」「お酒のせいで仕事をクビになりました。」周りの人が酒の失敗の話をしているので自分に当てはまることを少しずつミーティングで話せるようになっていました。それでも私は今入院しているけど、アパートはあるし、シンナーはやったけど薬はやってないからここにいる人達とはちょっと違うと思っていました。当時の中間施設へは、宿泊型施設の山谷マックや更生施設、ドヤ(簡易宿泊所)から通う人や薬物依存や摂食障害の女性の人達がいましたから、「仲間」と口に出してはいましたが自分とはやっぱり違うと感じていました。
しかし、しばらく通ううちに打ち解けて「仲間意識」は芽生えてきました。特にソフトボールのプログラムの時や外プログラムの時は打ち解けました。お昼休みも施設で過ごせるようになり、昼食時はおかずを分けてもらったり、たわいのない話をしててもみんなミーティングで話し慣れているせいか、それぞれの酒や薬の体験談を時には笑いながら話していました。そうしているうちに私自身も体験談を話すようになっていました。特に幻聴、幻覚の話の時は私自身の経験もひどいもので、アパートで飲み続けている時は2階に住んでいたのですが、トイレに入ると個室がエレベーターになっていて用をたすと1階に着く感じが毎回していたとか、飾ってあるフィギュアが動いていたとか話し、そのままミーティングでも話せることが増えてきました。一日出られる時は夜のAAまで3回ミーティングに出て、自分が警察に捕まったことや幻覚幻聴のことを話しているとみんなと一緒だと思えるようになっていました。自分のことを話していると徐々にですが、飲みながら生きていくのはできそうにないなと思えるようになりましたが、それでもまったくの断酒というのは自分の中ではぼやけていました。まだ飲みたかったのだと思います。ですから「酒のせいで」だけではなく自分自身の問題だと気付くのはまだ先でした。

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