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 コンビニの自動ドアが開きすごい人数の制服警官が入り口にいました。すこし間があり、何か叫びながら私に向かって来たと思ったら一瞬で私はうつ伏せに突っ伏されていました。誰かが「確保ぉー!」と叫んでいたのを身動き取れない状態で聞いていました。手錠をかけられパトカーに乗せられる時、あの映画の主人公みたいに野次馬に両手を突き上げました。「何やってんだ!」と頭を押さえられ、パトカーに押し込められて警察署に向かいました。まだこの時は酔っているのと、興奮しているので、自分のしたことの重大さを感じられませんでした。私の住んでいるアパートの近くで起こした事件でしたから、警察署も近くの警察署でした。写真を撮られ裸にされ、すべての指の指紋を採られました。その後は酔っているからかどうかわかりませんが、ちゃんとした取り調べはしなかったと思います。その日の夜は酒が切れてくると留置所の空調とリンクした幻聴の歌声が聞こえ眠れませんでした。
翌日検察庁に送られる時は、護送車から見慣れた風景を見るうちに自分のしたことの大変さに気づき、この先の不安と後悔で押しつぶされそうでした。検察庁から警察署に帰る時も家が近いのに帰れないという怖さでいっぱいでした。取り調べや検事調べでは半泣きになりながらお金目当てではないことを訴え、離婚のことや子供のこと、事件を起こすまでの状況を正直に話しました。
その後も取り調べは続き、刑事さんは関係者にも話を聞くので、叔母や別れた女房、勤め先の社長が警察署に来てくれました。私は直接会えなかったのですが、叔母は泣いていたそうです。社長はこの先も雇ってくれると言ってくれていたそうです。別れた女房については、取り調べの中で刑事さんに「奥さんはちゃんと暮らせているから大丈夫だし子供も心配いらないぞ。別れて暮らしている方が安定しているみたいだよ。」と言われ、複雑な気持ちでした。さらに留置場の同じ部屋ではその道のベテランの人に「初犯でも強盗だと執行猶予が付かないで懲役5年くらいかな」と言われますます落ち込み、また眠れなくなりました。

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