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私によくしてくれていた伯母と叔父が最も喜んでくれたのは子供が生れた時でした。父が亡くなってから子供ができたので、祖父母のように色々してくれました。しかしそんな叔父も50代で亡くなってしまい、その後は残された叔父の奥さんにも大変世話になりました。
借金生活で苦しんでいる時には「子供の為に」と借金を全額返済できる額を貸すと言ってくれました。でも私は変なプライドで返済額を少なく言って「もう大丈夫」と見栄を張り、なんとかやって行こうと思ったものの飲み方も考え方も変わっていないので二年もすると元の生活に戻ってしまいました。もう誰にも言えなくなった私は律事務所に相談し、自己破産申請をしました。
自己破産が決まりあらかたの借金がなくなると、私はこれからが踏ん張りどころにも関わらず楽になったからと勝手に外に飲みに行き、ある時はガード下で小便をもらして寝ていたり、ある時は調子に乗ってタクシーで帰ってきて料金が足りないから持ってこいと家の横で電話をし、お金を持って来た女房に初めて平手打ちをくらったりしました。その後も飲んで言い争いになると女房が子供の前でべろんべろんの私を張り倒し、子供を連れて実家に帰っていくのを倒れたまま見ていたこともありました。
そのうちにこんな私の姿を見てとうとう女房も愛想をつかし、離婚となりました。離婚が決まり最初こそこれからは好きなだけ酒を飲めると思っていましたが、すぐに淋しさと不安で考え直してくれと土下座までして女房にお願いしました。しかしそのお願いもすでに新しい生き方を決めていた彼女には通用しませんでした。やはり父と同じになってしまったと思いましたが、父と違うところは一人きりになったことでした。

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